タイムリミットは刻々と。

昨日APEメンバーのMさんとTと僕で、佐藤信演出、石橋蓮司主演の『リア王の悲劇』を観劇。舞台全てを埋め尽くす大階段とその両脇には前方から後方まで鎖が垂れ下がっている舞台美術で、衣装は長く垂れ下がった着物を基調としたものでした。俳優さんは主演の石橋蓮司を始め、実力派が出演しておりました。休憩を含めての3時間30分、厭きもせず興奮もせず、物語は幕を閉じていきました。演出よりも俳優個々の演技が舞台を支えていた感じ。特に辻萬長は声や身体の使い方が素晴らしかったです。プロの俳優さんだこりゃと思わされました。長女、次女の印象が予定調和的な悪女を感じてしまい、悪女は悪女でも別な表現で悪女を見たかった。殺陣とか階段のせいかとてもやりずらそうで少し閉口してしまったりして。でもって、最後は死んだ三女コーディーリアをリアが抱えて階段を上ってくるのだけれど、コーディーリアはいきなり人形になっていて、気持ちを同化できなかった。その人形であることを生かして狂ったリア王は2回くらい放り投げたりするんだけれど、じゃ、生身の人間でも放り投げるのかというとやはりそれはおそらく投げないのであり、ということは死んだ娘を放り投げるほどのリアの狂気は、コーディーリアの死体が人形であることに支えられていることになるわけです。人形といっても最愛の娘を放り投げるんだからスゴイんだけど、そこには冷静さが介在していて、つまり、リア王のそのものの感情のとは違う、俳優さんもしくは演出家の「人形だから」という安心感があって、それをどうにも読み取ってしまう。あー舞台芸術よ。
リア「お前の首を締めた奴は、俺が打殺してしまったぞ」
この台詞(上記の訳は福田恆存ですが)が妙に残った。
その日の前の夜、スタンリー・キューブリックの『2001年宇宙の旅』を始めて見た。衝撃を受けた。衝撃を受けた。DVDのパッケージのコピー通り"SFの原点にして未だ超えられぬ最高峰"だった。自分の数少ない映画鑑賞作品の5本の指に入った。Mさんと同じくこの映画を映画館で見たいっす。